LEOPARD
昭和61年2月18日、小雪がちらつく銀座日産本社で
真新しい車の発表会が行われた。
当時の日産の技術を結集して作り上げたパーソナル
2ドアクーペ。
その名はレパード。
ソアラを追撃すべく開発された日産の対抗馬であった。
車のいたるところに日本初・世界初のメカニズムを引下げて世に送り出したものの、販売面では
ソアラの陰にかくれ全くと言っていいほど振舞わなかった。
昭和62年6月には6インチカラーテレビを標準装備(2Lはオプション)するグランドセレクションを追加
するも販売台数を稼ぐには至らず大きく水を空けられた形となってしまった。
昭和63年8月23日マイナーチェンジを行う。
エクステリア・インテリア・エンジンとほぼ全てに手が
加えられ、フルモデルチェンジを思わせる変身を
遂げる。
最上級グレードのアルティマターボにはシーマと同型の
エンジン、VG30DETを搭載し馬力面ではソアラを上回る
255psを発生した。ドラマの後押しもあって一時は人気を取り戻すもやはり販売面ではソアラに
打ち勝つことはできなかった。
そして平成4年2月バブル時代の終焉とともにひっそりと日産のラインナップからその姿を消した。
結果、この6年間で世に送り出されたF31は約38000台。後年、その希少さから中古車市場で人気が
高まり皮肉なことにソアラよりも高値を付けることとなる。
年々その台数が減りつつあるF31だが1台でも多く日本の道路にその姿が残ってほしい。
パワーユニット
昭和61年2月〜63年8月までの前期モデルに搭載されるエンジンは全てV型6気筒のVG系で、
グレードに応じて性質は異なる。
XJとXJ-Uに搭載されるエンジンはVG20E型
1983年6月Y30セド・グロでデビュー。
メカ的には、油圧ラッシュアジャスター装備のSOHC2バルブヘッドを
備えた60度V6、30度オフセット位相クランクによる等間隔爆発、
一体型ベアリングキャップ、サイアミーズ吸気コレクターなどが
主なトピック。最高出力は115ps。
XSとXS-U、XS-Uグランドセレクションに搭載のVG20ET。
デビューはVG20Eと同時期だが1985年6月Y30マイナーチェンジ時に
ジェットターボを初採用。
そしてこのモデルでインタークーラー付きとなり最高出力155psになる。
1つのターボで2つの特性を持つターボチャージャーは低速域では
ニッケル耐熱合金製のフラップを閉じて排気流速を上げ、レスポンス
を向上させている。高速域ではフラップを全開にし、抵抗を減らす。
フラップは最大27°移動しA/Rは0.21〜0.77まで変化する。
VGシリーズの2Lモデルでは78×69.7mmというショートストロークのせいか当初はやや低速トルクが
不足ぎみという感じもあったがこのジェットターボによって、かなりトルク感を向上させることに
成功した。
アルティマとアルティマグランドセレクションに搭載のVG30DE。
このF31レパードでデビューしたVGシリーズ初のツインカム
VG30DEは、社内呼称では「EG1」と呼ばれてVGとは別シリーズ
扱いになっていた秘密兵器。それまでのSOHC版VGとはケタ
違いに高度なパワーユニットを目指した意欲作だった。
特にシリンダーヘッドまわりは最新技術のオンパレード!
左右各バンクに2本ずつ、計4本のカムシャフトは国産初。
気筒別に最適な点火時期を電子制御するシステムは世界初。
吸気バルブの開閉時期を電子制御するNVCSは国産初。他にもコンパクトなイグニッションコイルを
プラグに直接取り付け、ハイテンションケーブルによるエネルギーロスを防ぐNDISなどなど。
これらの技術を目の当たりにした某ライバル社の技術者が「うーん」と唸ったきり絶句したという伝説が
あるほど。ただしこのVG30DEはNAということもあってパワー数値的には185psとライバルソアラの
7M-GTEUの前では影が薄かったが必要以上の動力性能を発揮してくれた。
昭和63年8月以降の後期モデルに搭載されるエンジンは前期モデルに引き続きVG系だが2Lと3Lには
DOHCターボエンジンが新たに搭載された。

XJに搭載されるエンジンは前期モデルに引き続きVG20Eとなる。
これまで大きな変更はないが、のびやかに走るためのユニットとして
様々な車種に搭載されている。
最高出力は115ps。

XSに搭載されるエンジンは5ナンバー最強の出力を有するVG20DET。
昭和62年6月Y31セド・グロでデビュー。このレパードにも拡大採用
されるがインタークーラーの装着とプレミアム仕様により最高出力
210psになる。可変バルブタイミングコントロールなどのハイテクは
兄貴分のVG30DEを受け継ぎつつ、小排気量をカバーするため
ハイフローセラミックターボを採用。
タービンには新開発のCNR-1型。ローターを小型化し羽根形状・
ハウジング形状を最適化。大型ターボと同等の過給能力を確保した。
この翌年平成1年6月Y31M/C時には軸受けがRBと同じ
ボールベアリングとなる。平成4年のF31レパード生産打ち切りと同時
にこのユニットも消滅する。
アルティマツインカムに搭載されるユニットはVG30DE。
従来に比べプレミアム仕様により15馬力アップの200psとなっている。
排気系も改められエンジンの回転数に応じてチューブを切り替える
デュアルモードマフラーを採用している。
ツインカムならではのリニアな加速が味わえるユニット。

アルティマターボに搭載されるVG30DET。
昭和63年1月Y31シーマに搭載されこのF31レパードに拡大採用
される。レシプロエンジンとしてはまさに「究極」のスペックを備えて
いたVG30DEにさらにターボを加えたわけだから、そのインパクトは
強烈のひとこと。ただでさえ余裕のトルクを誇る3LV6に中高速域
ではさらにターボの勢いが加わって、加速だけはスポーツカー
顔負けだった。しかしこの当時のレパード&シーマの足は
ストラット/セミトレと大したモノじゃなかったからシャシーとのバランス
は決して誉められたものではなかった。
最高出力は255ps。平成1年7月にZ32がデビューするまでの間、
量産型エンジンとしては国内最強ユニットとして君臨する。
現在はVGからVQへとV6エンジンの主力はスイッチされており、
どのメーカーもV型エンジンを持っているが日本初のV6といえば日産のVG。直6を超える
滑らかな回転フィール。それでいて全長は直4並みとコンパクト。まさに直6の後を継ぐ次世代の
高性能ユニットだった。高級路線をひた走ってきた名機VG!「シーマ現象」という言葉の立役者で
あることも忘れてはならない。
輸出モデル INFINITI M30

もうひとつのF31。
1989年(平成1)1月Q45とM30をデトロイトと
ロサンゼルスのオートショーで発表。
同年11月Q45とM30の1990年モデルを販売開始。
気になる価格は$24500日本円で大体270万円(2004
年10月現在)くらい。
そして翌年にはコンバーチブルがラインナップに加わる。
M30とレパードの違いは左右のハンドル位置はもちろんヘッドライトやコーナーランプ、リアの
サイドマーカーなどなど。注目すべきは北米の安全基準に適合させるべくハイマウントストップランプ
やABS・エアーバッグなどが標準装備されていること。
逆にサイドミラーは電動可倒式ではなく手動式となっている。これも日本と北米の交通事情の差から
なのであろう。またエアーコンディショナーに関しても国内仕様とは異なり、室内循環にしても10分程
で自動的に外部循環になってしまう。これも日本とは違い、北米ではそんなに大気汚染が深刻では
ないということなのか?ダッシュボードはR31スカイライン用となっており、ステアリングやシフトノブの
形状が国内用F31とは異なる。
1992年3月INFINITIブランドの立役者となったM30は後継モデルのJ30(レパードJフェリー)にスイッチ
される。結果的に北米でどのくらいのM30が売れたのかは不明だが、少なくともレパードよりは
販売台数を伸ばしたことだろう。

M30に搭載されるユニットはVG30E型。
60°V型6気筒SOHC。最高出力は162ps。
国内モデルがDOHCを搭載している今日ではなぜ
今さらSOHCなのかと疑問を抱かざるを得ないの
だが理由はいくつか挙げられる。
その1、物理的に左ハンドルのM30にはVG30DE(T)
は搭載不可なのか?もしくは大柄なアメリカ人の体型に
合わせ足元を広く取る為、コンパクトなVG30Eを搭載?
その2、アメリカでは道が日本と違い広く、のびやかに
走れる為このVG30Eで必要にして十分なユニットなのか?
その3、生産コストを抑えるためなのか?
今となってはその真相を明らかにすることは難しいが、やはり日本の交通事情では非力さは
否めない様だ。
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